2018.05.08
今回は三叉神経痛と顔面神経麻痺について書いていきたいと思います。
◎三叉神経痛
三叉神経とは、12対ある脳神経の一つで、第V(5)脳神経とも呼ばれ、三叉とはこの神経が眼神経(V1)、上顎神経(V2)、下顎神経(V3)の三神経に分かれることに由来します。三叉神経の機能として、顔面と前頭部の皮膚の感覚を司る感覚神経と、鼻腔と口腔粘膜を司る感覚神経と、咀嚼、嚥下(飲み込み)運動を司る運動神経があります。
三叉神経痛とは、微小血管が三叉神経を脳幹の出口で圧迫し、片方の顔面に針で刺すような電撃痛があります。
男女比は女性が多く、40代以上に多いとされています。
病態
三叉神経痛には、大きく分けて二つあり、本態性三叉神経痛と症候性三叉神経痛に分けられます。
・本態性三叉神経痛
原因として、不明とされてきたが、近年脳底動脈系の血管が三叉神経を圧迫するために激痛が起こるとされています。
・症候性三叉神経痛
原因は中毒(鉛、アルコール、ヒ素)、感染(インフルエンザ、梅毒、帯状疱疹、結核)腫瘍、動脈瘤などの疾患で二次的に起こるものです。副鼻腔炎や耳内部の炎症などで三叉神経痛の様な症状が出現する場合もあります。
症状
・発作性の疼痛
発作性の強い顔面痛が三叉神経領域に沿って現れる。間欠期には無症状となります。特に頬から顎にかけての痛みが多いかと思います。
・疼痛誘発部位の存在
疼痛は咀嚼、会話、あくびなどの顔面の運動刺激によって誘発されます。
・痛み以外の症状はない。
三叉神経領域の知覚鈍麻や筋力低下は伴わない。
三叉神経痛の痛みは強烈で、激痛発作時は、洗顔ができない、歯が磨けない、食事ができないということも少なくないです。痛みは季節によって増悪します。
診断
腫瘍によることもあるためMRI検査により腫瘍が無いことを確認する必要がある。ないことが確認できれば、症状から診断は容易である。
治療
・薬物療法
デグレトールを主体とする薬物療法
ふらつき、眠気の副作用が強いため、最初は100mgから始め徐々に増やしていく。肝機能や白血球の減少などをきたす薬なので、定期的に血液検査を行います。
・三叉神経節ブロック
神経での痛みの伝導を押えて痛みを感じなくさせてしまう方法でブロックや高周波熱凝固するとすぐに効果がみられる。薬物療法の無効例、手術を受けられない高齢者が対象となります。
・三叉神経痛での鍼治療
三叉神経の治療の目的として、三叉神経付近の血流状態をよくして、神経に栄養を与えることにより、痛みを和らげていきます。
ここで行うものとして、三叉神経の近くや、咀嚼筋、痛みの出る所に鍼を刺していき電気を流すことにより、血流を良くし、筋肉の緊張をとります。そうすることで突発的な痛みを緩和していきます。
また、顔面・頭蓋や筋肉の調整をし、血液循環を高めることによって緩和につながると思います。
◎顔面神経麻痺
顔面神経とは
顔面神経は、第Ⅶ(7)脳神経とも呼ばれ、表情筋の運動を支配する運動神経と、味覚を伝える感覚神経と、唾液腺、涙腺を支配する副交感神経に分かれる。
味覚は舌の前2/3を支配している。
病態
顔面神経は骨性の硬く狭いトンネルのような顔面神経管を通るが、ヘルペスなどのウィルス感染や他の原因で腫脹し管の中を圧迫され麻痺をきたす。その他に鼻や耳の疾患などでの循環障害の関連も考えられます。脳血管障害の後遺症により、顔面への麻痺等が起こる。
症状
末梢神経麻痺の症状(一側性)
・額のしわ寄せできない
・閉眼困難により、涙がこぼれ、兎目になる、目の乾燥、充血・口角が下垂し、食べ物、飲み物が口からこぼれる、口笛が吹けない・舌前2/3の味覚障害、涙分泌障害、唾液分泌障害、聴覚過敏など
中枢性の場合
・額のしわ寄せはできる
・末梢性の症状に加え、痙攣が起こる
診断
臨床経過、症状から診断できる。
治療
発症直後は安静にし、麻痺の進行が停止したのち、局所のマッサージ、低周波治療などを行う。
・顔面神経麻痺での鍼治療
顔面神経麻痺・ベル麻痺は、神経の状態が悪くなるために起こります。原因としては、炎症などにより神経の血流状態が悪くなる事です。血液は、神経に栄養分を与えるので、神経の血流状態を良くするのが最も重要です。
ここで行うものとしては、顔面部の表情筋に鍼を刺し、そこに電気刺激を与えることにより、麻痺で垂れ下がった筋肉を刺激して、血液循環を良くすると、症状の改善がみこまれます。また、鍼以外でも顔面・頭蓋の調整や、骨盤周囲や下肢なども同時に調整することによって、循環を高めることで症状の緩和につながると思います。
当院のBC-MT療法や鍼灸で症状の緩和が見込まれるものもありますので、一度来院して頂いて状態を拝見させて頂き、皆様のお力になれればと思います。